ネバーランド

2006年10月4日
この間「チャーリーとチョコレート工場」で怪しいオーナー役を演じてたジョニー・デップが、今回は「ピーター・パン」の作者の役に。この作品、タイトルだけを聞いたときは、いつまでたっても大人になれない子供のような人が主人公なのかと思ってた。だから、結構ほのぼのした感じの、子供も一緒に観られるようなストーリーなのかと。だけど、全然そうじゃなくて、大人向け。主人公は、冷えきった夫婦関係に疲れ切った立派な大人じゃないか。

主人公は、想像力が人よりも豊かなのね。だから、目の前で起こっていることも、「こうだったらおもしろいだろうな」っていうように想像することができる。もしかしたら私たちだって、子供の頃はこんなふうに際限なく想像を広げられたのかもしれない。いろんなことがわかってきてしまって、自分の限界がみえてしまった今となっては、想像力もずいぶん制限されてしまっているかも。

一方で、主人公と対照的なのは、公園で偶然出会った4人兄弟のうちの一人、ピーター。ピーターは、父親を亡くして以来、何かを想像して楽しむ心を失ってしまっている。期待したり、楽しんだりする心を。子供って、一般的には何でもできると思ってるし、何にでもなれると思ってるものじゃない?それなのに、ピーターは、父親を亡くした悲しみから、悲しみから身を守るかのように心を閉じてしまってる。

ただ、主人公が、ほんとに子供みたいな生活を送っていたとしたら、このストーリーはここまで心に残らなかっただろうな。ミュージカルは評判が悪くて途中で打ち切りだし、夫婦関係は冷えきっているし、子連れの未亡人を愛してしまっているし、私生活は決して甘くない。心が疲れてしまいそうなことばかり。それなのに、ピーターパンっていうおとぎ話みたいに夢のあるお話を書いちゃうところがすごい。そして妖精なんていう、大人だったら「そんなのいないよ」って思っちゃうようなものに、大人まで「妖精を信じるっっ!」って思わず叫んでしまいそうになるようなストーリーを考えついちゃうなんてね。悲しみのあまり子供の心を失いそうだったピーターの心も、少しずつ開いてきたりして。

そういえば、ハリー・ポッターの作者も、一人きりで子供を抱えて生活保護を受けてるような状況で書いた作品が全世界で大ヒットしたんだったっけ。むしろ、厳しい環境に置かれていた方が、いやなことから逃げるためにも、空想の世界を膨らませることができるのかしら??

派手じゃないけど、すごく印象に残った作品だった。
現実世界のもやもやと、空想世界のウキウキ感が対照的。子供の心と大人の心も対照的。最近心が疲れ気味かなって感じている人に観てほしい作品。

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