公開されてからずいぶん立ってしまってたんだけど、結構評判が良いので観に行ってみた。この「もっともっと」に前も書いたけど、この作品のTVCMがあまりにもオーランド・ブルームの人気に頼り切って若い女性だけをターゲットにするかのようなむかつくCMだったもんだから、俳優の人気だけに頼った薄っぺら(例えて言うなな「オーシャンズ12」みたいな)な作品かと思っていたんだよね。でも評判は良かったし、実際自分で観てみても、あのおちゃらけたTVCMが作品の印象を台無しにしていることがはっきりわかった。もっと重厚でまじめな作品なのだ。

ただ一つ惜しいと思うことは、キリスト教だの十字軍だの、そういうテーマについて全く基礎知識がないこと。この間の「コンスタンティン」の時にも感じたことだけど、テーマについての基礎知識がないと、「そんなこと言わずもがなでしょ」ということで映画に描かれていないバックグラウンドがわからないために、映画の理解度が下がり、その分楽しみが減ってしまうのかもしれない。ま、おそらく黒澤明を世界的に有名にした「七人の侍」をみた外国人だって、江戸時代の士農工商とか侍が切り捨てごめんとか仇討ちとかそういうことはもしかしたらわかなんなかったとすると、まあ同じですな。映画を楽しむためには、それなりの教養も必要ということか。

「チャラチャラ映画だと誤解させるTVCM作って何やってんだよ、配給会社!」と怒っている私だけど、そのチャラチャラ映画系CMで言われる通り、不覚にも「オーランド・ブルームかっこいい〜?」などと思ってしまった。LOTRでは、妖精のように清らかで、それでいて強くてという役柄を演じた彼だけど、今回の役は、腹が立つほど頑固で実直過ぎるという人間臭い役。あ、ただ、見た目は、ジョニー・デップやキーラ・ナイトレイと共演した、私にはあまり評判の良くなかった「パイレーツ・オブ・カリビアン」とそっくりだ。もしや演じている役柄も似たようなものなのでは・・・。いかんいかん、私も、彼のかっこよさのあまり、「かっこよければそれで満足?」的な評価になってしまっているのではなかろうか。自分では、「ただ単に俳優のネーム・バリューや人気にあやかっただけの映画なんてサイテー。そんなの絶対評価しない」と思っているつもりだったけど、どうやら私自身も騙されているらしい。

言い訳する訳じゃないけど、この作品はオーランド・ブルームの人気だけのチャラチャラ映画ではない。リドリー・スコットがこの作品で伝えたかったことは、そのときの権威者にとって都合の良い宗教の解釈や教義のために、たくさんの人命が失われている現代の戦争やテロの批判だと思う。「異教徒を殺しても殺人にならない」というセリフが映画の中に出てくるけど、絶対にあり得ない。結局、人々の信仰心を利用して、自分の都合の良いように使っているだけなんだろう。人々を苦しみから救うための宗教のために戦争が起きたり、テロが起きたりすることが本当に信じられない。そんな宗教だったらなくていい。そんなメッセージを伝えることがテーマだからこそ、この作品の中でバリアンは負けたかもしれないけどヒーローだし。こんなふうに、しっかりしたテーマ性のある映画に、たまたまオーランド・ブルームが出演しているというだけで、あちこち起こるテロや戦争のことを考えると、決してチャラチャラ映画ではないとわかる。

戦闘シーンは結構リアルだったし、まだ劇場で公開している間に観ておいてよかったと思えた作品だった。

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