ドロレス・クレイボーン
2005年4月19日スティーブン・キングの原作で、主演がキャシー・ベイツ。この二人の組み合わせと言えば、キャシー・ベイツがアカデミー主演女優賞を受賞した「ミザリー」が浮かぶ。私が「ミザリー」を観たのはおそらく中学生の時だったんじゃないだろうか。それまで映画すらそれほど観たことがなかったのに、なんで「ミザリー」を中学生の私が観たのかは覚えていない。ただ、「とても怖い映画だった」ということは強く印象に残っている。でももう10年以上経っているし、もう一度観てみたい気もする。中学生の時とは感じ方かも違うかもしれないし。
でも、今回の「ドロレス・クレイボーン」は「ミザリー」とは違う。狂気の怖さはなく、むしろ悲しい。端から見ていても、正直幸せとは思えない人生。見た目も決して美人とはいえず、むしろブスなほう。酒浸り夫から暴行を受けたり、安いお給料で意地悪な女主人に朝から晩までこき使われるような生活。唯一大切に守ってきた娘も、自分を顧みることなく、ずっと離れた都会でなんだか命を切り売りするかのように生きてる。そんなドロレスが、長年仕えた女主人のヴェラに向かってのし棒を振り上げているところを郵便配達員に目撃され、ヴェラが死んでしまうところから話は始まる。様子を見に来た娘に対しては優しいけど、捜査官や町の保安官に対しては悪態をついたりして、観客としても、こんなおばさんにとても感情移入なんかできない。観客も、娘や町の人たち同様に「このおばさんならやりかねないかな」と思ってしまう。でも、ドロレスのこれまでの人生を、彼女と一緒に振り返っていくうちに、このおばさんにどんどん感情移入してしまった。
酒浸りで暴力を振るうひどい夫と我慢して暮らしているのも、娘のためだったんだろうか。娘にだけは、自分と同じような道を歩ませたくないと、学費にするために安い給料で身を粉にして働く毎日。コツコツコツコツと、そのお給料を娘名義の口座に貯めていく。娘のためにと、じっと耐える毎日。長い間そんな風に耐えてきたのに、娘に何かあったとわかったときには、すぐさま出て行こうとする。そうしてまたしても、自分が裏切られたとわかる。
そんな風に自分を犠牲にしてまで守ってきた娘に疑われることが、どれほどか辛かったかと思う。しかも、そんなふうに守った娘も、金銭的には恵まれていたとしても、決して幸せとは思えないような暮らしをしている。物理的にも精神的にも自分から遠く離れてしまった娘のことを想って、娘の書く記事をスクラップブックにきれいに整理して貼っているような健気さもドロレスにはあるのだ。そんなドロレスの姿を見ていると、思わず涙がこぼれてしまった。お互い口汚く罵り合っていても、実は心を通わせあっていたドロレスとヴェラ。二つの事件の真相がわかったときに、冷え切っていた関係がようやく少し温まった感じのする母と娘。大切なものを守りきるためだったら、女というのはここまで強く恐ろしくなれるものなのか。
キングの作品は、宇宙人が出てきたり、人に不思議な力があったり、この世の終わりのような信じられない出来事が起こったりするようなストーリーが印象的なんだけど、この作品には、どこにもそんなものがない。全て現実にありそうなお話。
キングの原作を読んだことはないんだけど、原作を忠実に再現されているんだろうか?映画ならではの表現手法が用いられて、派手さはないけど、じんわり来る作品に仕上がっていたように思う。例えば、現在のドロレスは、暗く寂しい景色の中で描かれていて、それは今彼女が置かれている状況を表しているかのよう。それに対し、彼女が昔を思い出すときは、たとえそれが夫に暴力を振るわれるシーンであっても、色が鮮やかなのだ。彼女が娘を守るために、娘を育てるためにがんばっていた昔というのは、苦しい状況であったとはしても鮮やかな思い出だったのかも。それに対し、娘が自分を人殺しだと思ったまま離れてしまった、寂しい今のドロレスを表しているのかも。
どこがどうというわけではないけど、なんか心にじんわり来た作品。
でも、今回の「ドロレス・クレイボーン」は「ミザリー」とは違う。狂気の怖さはなく、むしろ悲しい。端から見ていても、正直幸せとは思えない人生。見た目も決して美人とはいえず、むしろブスなほう。酒浸り夫から暴行を受けたり、安いお給料で意地悪な女主人に朝から晩までこき使われるような生活。唯一大切に守ってきた娘も、自分を顧みることなく、ずっと離れた都会でなんだか命を切り売りするかのように生きてる。そんなドロレスが、長年仕えた女主人のヴェラに向かってのし棒を振り上げているところを郵便配達員に目撃され、ヴェラが死んでしまうところから話は始まる。様子を見に来た娘に対しては優しいけど、捜査官や町の保安官に対しては悪態をついたりして、観客としても、こんなおばさんにとても感情移入なんかできない。観客も、娘や町の人たち同様に「このおばさんならやりかねないかな」と思ってしまう。でも、ドロレスのこれまでの人生を、彼女と一緒に振り返っていくうちに、このおばさんにどんどん感情移入してしまった。
酒浸りで暴力を振るうひどい夫と我慢して暮らしているのも、娘のためだったんだろうか。娘にだけは、自分と同じような道を歩ませたくないと、学費にするために安い給料で身を粉にして働く毎日。コツコツコツコツと、そのお給料を娘名義の口座に貯めていく。娘のためにと、じっと耐える毎日。長い間そんな風に耐えてきたのに、娘に何かあったとわかったときには、すぐさま出て行こうとする。そうしてまたしても、自分が裏切られたとわかる。
そんな風に自分を犠牲にしてまで守ってきた娘に疑われることが、どれほどか辛かったかと思う。しかも、そんなふうに守った娘も、金銭的には恵まれていたとしても、決して幸せとは思えないような暮らしをしている。物理的にも精神的にも自分から遠く離れてしまった娘のことを想って、娘の書く記事をスクラップブックにきれいに整理して貼っているような健気さもドロレスにはあるのだ。そんなドロレスの姿を見ていると、思わず涙がこぼれてしまった。お互い口汚く罵り合っていても、実は心を通わせあっていたドロレスとヴェラ。二つの事件の真相がわかったときに、冷え切っていた関係がようやく少し温まった感じのする母と娘。大切なものを守りきるためだったら、女というのはここまで強く恐ろしくなれるものなのか。
キングの作品は、宇宙人が出てきたり、人に不思議な力があったり、この世の終わりのような信じられない出来事が起こったりするようなストーリーが印象的なんだけど、この作品には、どこにもそんなものがない。全て現実にありそうなお話。
キングの原作を読んだことはないんだけど、原作を忠実に再現されているんだろうか?映画ならではの表現手法が用いられて、派手さはないけど、じんわり来る作品に仕上がっていたように思う。例えば、現在のドロレスは、暗く寂しい景色の中で描かれていて、それは今彼女が置かれている状況を表しているかのよう。それに対し、彼女が昔を思い出すときは、たとえそれが夫に暴力を振るわれるシーンであっても、色が鮮やかなのだ。彼女が娘を守るために、娘を育てるためにがんばっていた昔というのは、苦しい状況であったとはしても鮮やかな思い出だったのかも。それに対し、娘が自分を人殺しだと思ったまま離れてしまった、寂しい今のドロレスを表しているのかも。
どこがどうというわけではないけど、なんか心にじんわり来た作品。
コメント