原題はTHE INCREDIBLESなので、家族全体が主役なのね。
この作品も結構おもしろかった。アニメーション的に、「最近のアニメってすごいな〜」って私が感心したのは、シンドロームっていう敵役が、窓越しにロケットを見つめているシーン。アニメーションなんだけど、まるで実写のような立体感。本当にそこに人間がいて、窓があって、窓の向こうにロケットが見えている、実写映画のワンシーンのようだった。子供が観てももちろん楽しめると思うけど、大人が観ても楽しめるはず。

ミスター・インクレディブル自身も含めて、家族がみんな、自分の能力をひた隠しにしなくちゃいけないっていうことで、みんながそれぞれストレスを抱え、問題も抱えている。彼らのスーパーな能力=個性って考えるとすると、個性を押し殺してると、どこかで無理が出ちゃうってことなんだろうな。「出る杭は打たれる」って昔から言われているけど、人より優れた能力を持っているインクレディブル一家は「打たれない」ようにするためにその能力を積極的に使うことなく過ごしているんだよね。当然ストレスがたまるわけで、息子は学校での問題児だし、長女はクラ〜い感じだし、ミスター・インクレディブル自身もすっかり疲れ切っている様子。この映画では、そんな彼らがそれぞれ特徴的な能力を活かして敵と戦い、みんなを救ったりもする。私自身は、この映画から人それぞれの持っている能力を尊重して、そしてその能力はみんなのために、良いことのために使うようにしなくっちゃっていうメッセージを受け取ったんだけど、製作者側にそこまでの意図があったかどうかはわからない。

インクレディブル一家のそれぞれが持つ能力の中でも、ユニークだったのは「元イラスティック・ガール」のママの能力かな。とにかく身体がどんな形にもなるので、その時に役立ちそうな物に瞬時に変わっちゃう。その変身後が、「そうきますか」って感じで結構笑えたな。

昔は「アニメなんて子供の物」っていう感じだったけど、今では大人も楽しめるものから、最初から「大人向け」のものまで、アニメーション自体の社会的な地位もアップしてきたみたい。アニメーションという表現方法を使って大人が楽しむ作品を創ること自体に反対するわけじゃないけど、それでも「子供が楽しめる」っていう部分をいつまでもいつまでも残しておいて欲しいって思う。子供って、いいことでも悪いことでも、自分が観たもの聞いたものすべてから何かを学び取る力が旺盛だと思うんだけど、楽しみながら、それでいて生きていく上で大切なものをなにかテーマとして盛り込んでいるようなアニメは、今後も子供達のために絶対作り続けていって欲しいと思う。意外にそんな物から、大人が思っている以上に子供達は学んでいるんじゃなかろうか。そういう意味では、今回のミスター・インクレディブルはまさにその点では百点満点だと思うし、そういう観点から観れば、去年大ヒットだった「シュレック2」は、子供にとってはどうだったのかな?って感じ。私は観ながら相当笑わせてもらったけど、子供向けではなかったよね、きっと。

「アニメなんて!」って今でも思っている人にも、一度観に行ってもらいたいな。冒頭にも書いたとおり、映像のリアルさでいえば、影の部分に鉛筆でざざざーって塗りつぶしたみたいに描いていた「タイガーマスク」とかの荒っぽいアニメーションとは全然違うので、それだけでも、「アニメなんて!」っていう思いこみを覆す材料になりうると思う。そんなわけで、この作品も劇場に観に行く価値のある作品。

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