映画を観る前には、父の最期を前にようやく父と息子の間で心が通い合うお話なのに、どうしてこんなタイトルなのかわからなかった。見始めてようやく、この作品の中でビッグ・フィッシュがキーワードのようによく出てくるようになってようやくわかった。

父が語るお話は、空想の世界と現実の世界との区別が本当につかない。ただ、映画の中でドクターが言うように、真実だけをつまらなく退屈に語るよりも、だいぶながい尾ひれが付いていても、夢のあるおもしろおかしいお話の方がずっといいのかも。「長い長い尾ひれがついているんだろうな」とか「どうせほら話だから話半分に聞かなくちゃ」なんて思ってしまうのは、もしかしたら心に余裕がないからかもしれない。「ホラ話かもしれないけど、本当にそうかも」と思って耳を傾けることの出来る心の余裕というか、ゆったりと構えていたいなと思ったりして。

おおむね穏やかな気持ちでみていたのだけれど、涙があふれて止まらなかったのは、息子が父の最期のお話を自分で作って聞かせるシーン。そこには、息子が「どうせまたいつもの親父のホラ話だ」って頭から信じなかった空想の中の父の友人達が次から次へと現れて、みんなで父のことをあたたかく見送る。息子が即興で作ったお話を聞いて、息子にもしっかりと父の心が伝わったのだとわかる。観客は、息子を通して、まるで父のことを自分も理解したような気持ちになれる気がする。

カレンダーガールが、現実世界に起こる「面白いお話」だとすると、ビッグ・フィッシュは、空想の世界がほとんどで、でもちょっとたけ現実世界にもつながっているという感じ。この、空想とも現実ともつかないお話の雰囲気が、父の若い時代を演じているイワン・マクレガーとぴったり合っている。
映画の内容を思い出しながらこれを書いているだけでも、思わずほろっとしてしまうくらい、感動作品でした。

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