たそがれ清兵衛

2004年5月8日
以前、「たまには日本の映画も観てみるか」と思ってみた梟の城が最悪で、やや日本映画アレルギーだったんだけど、たそがれ清兵衛のおかげで症状は回復。そういう意味では前回は選んだ作品が悪すぎたともいえるかもしれない。

全般的にトーンはかなり暗い。見所の殺陣のシーンだって、わざわざ閉め切った屋内を舞台に選んでいるのでとにかく暗い。この暗くて地味な舞台で、真田広之がたんたんと清兵衛を演じているのがいい。清兵衛は、仲間内からは「おもしろみのない男」としてバカにされているけれど、一人で木刀を振ったり、果たし合いをしたりするシーンにはちょっとコミカルな一面が垣間見えるようだった。
真田広之といえば、ラストサムライの中では、剛胆というか血気盛んというか、激しくていかにも「カッコいい」人物を演じていたけど、それとは対照的なカッコよくない地味な役でもできちゃうとはね。かなり見直しました。

子供達の面倒に母親の世話、畑仕事に内職までして、身なりもぼろぼろな感じの清兵衛。藩政の表舞台に立つこともなく、地味で、全然カッコいいところはない。だけど、家族思いで、やるときはやるというその姿は、それはそれでカッコいいと思うんだよね。「いかにも」というカッコよさじゃなくて、この清兵衛のカッコよさを映画にしちゃうところに、山田洋次のすごさがあるのかな?この人の作品はほとんどみたことはないけど、たそがれ清兵衛で描かれる地味なカッコよさって、ある意味で、世の中に生きている大多数の、家族を思って働き、でも会社ではぱっとしないようなお父さん達にも通じるものがあるかもしれない。

ただ、この作品、最後までちょっと暗かったのが、あんなに腕の立つ清兵衛も、時代の流れには逆らえず、戊辰戦争のときに鉄砲に撃たれて死んでしまうというところ。せっかく「さえない=カッコよくない」一般市民を励ましたかと思ったら、「でも、時代の流れには逆らえないよね〜」ってバッサリ切って捨てちゃう。これじゃあ、「やっぱダメだな」って思っちゃう気もするんだけど・・・

暗い暗い作品の中で、宮沢りえの出るシーンだけ、ぱあっと明るくなる。この女優さんもいろいろあったけど、自分の道を着々と歩いている気がするな〜。

日本の映画にもいい味出してるものがあるのね〜と見直した作品。この作品が評価されている世の中って、まだまだ捨てたもんじゃないかもしれないと思ったりして。

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